ここでは「メインバンク」についてのよくあるご質問をまとめました。

 

【質問】

メインバンクとは何ですか?

【回答】

メインバンク(mainbank)とは文字通り主取引銀行、その会社がお金を借りているいくつかの金融機関のうち、一番多く借りている金融機関のことを指します。

二番目に多く借りている銀行は「準メイン」「サブメイン」と呼びます。

一番目と二番目が競り合いつつ、三番目以下を大きく引き離しているような状態は「並行メイン」「並列メイン」と呼ぶことがあります。

また、借入をしている金融機関が一か所だけの場合は「一行取引」と言われます。

 

【質問】

メインバンク「制」とは何ですか?

【回答】

メインバンク制を正確に説明しようとすれば、やたらに長くて難しい文章になります。

でもここでは、昭和や平成に、メインバンク制という言葉がどんな意味で使われていたか簡単にお伝えしましょう。

それはこういうものです。

「たとえその会社の業績が悪くなったとしても、メインバンクがそれまでと変わらず融資その他の支援を続けることで、その会社を倒産させないようにする戦後長く続いてきた商慣習」<もちろん、メインバンクは慈悲や義侠心でその会社を助けるわけではありません。

融資残高が数十億を超える、あるいは長年の人的交流など、メインバンクにとっても手を引くに引けない状態だから助けざるを得ないわけです。

従って、中小企業が上に述べたような意味で「メインバンク制」の恩恵を受けることはまず期待できません。

メインバンク制は上場企業をはじめとする大規模企業を支えるための一種のセーフティネットと言えるでしょう。

 

【質問】

メインバンク制は崩壊したのですか?

【回答】

前問で述べたような「メインバンク制」は1990年代以降、次第に姿を消しつつあると言われています。
「長いつきあいだから・・・」
「抜本的なリストラはもう少し様子をみてから・・・」
「自分が頭取の間は厄介ごとは避けたい・・・」

そんな企業と銀行の凭れ合いは不良債権問題をもたらし、日本経済は破滅寸前とささやかれるところまで行きました。
その反省のもと、ほとんどすべての金融機関が審査体制の見直し、一企業への過剰融資の回避、債権回収部門の強化を行っています。

それではこれからの時代、業績が悪くなればメインバンクといえども直ちに融資打ち切りに動く時代になるのでしょうか?

それはまだ、一概にそうとも言えません。

メガバンクと地方銀行、信用金庫では温度差があります。
日本全国に展開するメガバンクと異なり、地元の企業だけがお客様である地銀・信金はドライになりきれない場合もあるのです。

そのような地域金融機関は、今でもメインバンクとして業績悪化企業を支え続けるケースが見られます。

ともあれ、会社が成長して複数の金融機関から融資を受ける段階になれば、できるだけ業態の違う金融機関を選びましょう。
つまり、メガバンク・地銀・信金・政府系金融機関それぞれと取引しなさいということです。
オーソドックスですが、それがメインバンク制が消滅しつつある時代の、企業の自衛策と言えるでしょう。

 

【質問】

メイン寄せとは何ですか?

【回答】

多くの企業は複数の金融機関から融資を受けており、そのうち融資額が最大の金融機関がメインバンクと呼ばれます。

ところでその企業の業績が悪化してくると、一般的に融資額の小さい金融機関から先に融資を引き揚げようと動き始めます。
今まで毎年応じていた借換えに応じなかったり、借換えの際に高い金利を提示して、企業側から断るように仕向けたり・・・

そうして他行の融資が減少しても、企業が必要とする借入額は今までと変わりません(業績悪化でむしろ増加します)。

その分はメインバンクが融資することになりますので、徐々に融資総額に占めるメインバンクの比率が高くなっていきます。これがメイン寄せです。

反対に、業績のよい企業であれば借りてもらいたい金融機関が次々営業をかけて低い金利を提示しますので、メインバンクの比率が下がって行くことがあります。

メイン寄せは一般的には悪い徴候です。
倒産という最悪の事態になれば、融資が集中した分、メインバンクがごっそりと損失をこうむることになります。
もっとも、昔ほどメインバンクが他行の肩代わりに積極的ではなくなりましたので、これからは過度のメイン寄せは見られなくなるでしょう。

 

【質問】

中小企業の取引金融機関はどのような構成が多いのでしょうか?

【回答】

取引金融機関をどうするか(同時にメインバンクをどこにするか)、それは難しい問題です。

ただ現実的に、取引金融機関は会社規模に応じておおむね似たようなものになります。
例をあげましょう。

一、中堅企業A社(年間売上高約20億円・従業員数40名)の場合

・メインバンク    メガバンクM行   借入総額約3億円
・準メインバンク    地元地銀K行    借入総額約2億円
・政府系金融機関    商工中金       借入総額約1億円
・他にメガバンク1行、地銀1行、信金1行から各数千万づつ借入あり。

二、中小企業B社(年間売上高約1億円・従業員数3名)の場合

・メインバンク    地元地銀N行    借入総額約2千万円
・政府系金融機関   国民生活金融公庫  借入総額約7百万円
・他に地銀1行、信金1行に預金口座のみあり。

どうでしょう、何となくイメージできるでしょうか。

 

【質問】

中小企業は取引金融機関をどのように選べばよいですか?

【回答】

先ほども触れましたが、取引金融機関をどこにするか、メインバンクをどこにするか、これは経営上重要な問題です。

もちろん、金融機関選びはその会社の経営方針に大きく左右されます。
積極的に借入を行うのか、無借金経営を目指すのか?
全国展開型か、地元密着型か?
手形や小切手は多く扱うのか?
海外との取引は発生するのか?
その答えによって、適切な金融機関は異なります。

よく「メガバンクと地銀・信金ではどちらがよいですか?」「ネット銀行と普通の銀行ではどうですか?」とご質問をいただきますが、その答えは会社によって違うのです。

なお起業段階での金融機関選びはあまり難しく考えず、以下のような基準で考えると良いでしょう。

・店舗やATMが便利な場所にある。

・駐車場が停めやすい。

・主な取引先と同じ金融機関である。